EF-M28mm F3.5 マクロ IS STM──視える!視えるぞ!

はじめに

マクロレンズを買いました。色々悩んだ結果、もう開き直ってキヤノン純正のミラーレス用マクロレンズを買うことに決めました。初心者は大人しく純正品を買っておいた方が無難かなとも思ったのも一因です。

中古で状態の良いものを探して購入したので定価の半分くらいで入手出来ましたし、思った以上に優秀なレンズだったので特に不満はありません。

このレンズの特徴は、レンズ先端部にLEDライトが付いていることと手ブレに強いこと。最低撮影距離は10cm弱で、撮影倍率は1倍と1.2倍の二段階です。そして重さ130gなので実に軽い。300gの望遠レンズで「重たっ!」と思ってしまうほどの貧弱腕力を誇る私にとって、軽いことはかなり重要です。

 

詳しく見ていく

LEDが前面に付いているので、ちょっと変わった見た目をしています。何だか白目と黒目みたいに見えます。この大きな目が可愛くて愛らしいので個人的には好みです。

白目の部分は専用のカバーで隠すことも出来ます。可愛さなど要らん!という硬派な男達もライトを隠すことで威厳を保つことが可能ですのでご安心下さい。私は軟派なので出しっぱなし。

そしてこのライト、当然ですが光ります。カメラの電源を用いて光るので、別途電池などを用意する必要はありません。私の様な面倒臭がり屋さんには大変ありがたい仕様です。光の強さが強弱二段階あるのに加え、左右片方ずつの点灯も可能です。オン・オフもレンズ側面の電球ボタンをポチポチするだけなので、5歳児からおじいちゃんまで、どんな方にも幅広くご使用いただけます。

撮影倍率は1倍と1.2倍の二段階あり、レンズを回して切り替えます。SUPER MACROと書かれてあるのが1.2倍の方ですね。

ちなみにレンズが収納状態のままだと、こんな風にカメラが教えてくれます。

重さは130gで、普段私が使っている標準レンズと同じです。元々EOS kiss Mの本体重量が諸々込みで400g弱しかないので、レンズをマウントしても500g程度。一般的なスマホ3つ分くらいの重さです。非力な私でも片手で軽々と扱えます。

 

実際に撮ってみる

私の中で果てしなく続く、スマホカメラとミラーレスカメラの主導権争い。しかしながら、マクロに関してはこちらの圧倒的優勢でしょう。

私の使っているスマホは通常の広角レンズこそ1億800万画素とかいう意味分からんカタログスペックですが、マクロレンズはたかが800万画素に過ぎないのです!少なくとも接写に於いてはあらゆる点でマクロレンズを装着したkiss Mの方が有利です。

では、実際に写真を撮って比べてみます。撮影対象は、昔インド旅行に行った際に博物館でお土産として買った謎のコンパス。Made for royal navyとか書かれてますが、インドのやつです。ちなみにこの写真はEF-M28mm F3.5 マクロ IS STMの1倍で撮影しています。

では、EF-M28mm F3.5 マクロ IS STMの1倍で接写してみます。おー、凄い。かなり拡大出来ますね。毛穴までクッキリ。目視では確認出来なかった、表面の細かな埃まで写っています。

続いて、比較のためにスマホのマクロモードで撮影してみます。これくらいが限界ですね。

この子も結構頑張ってくれていますが、スーパーマクロモードどころか標準モードにも敵いません。更に最も辛いのは、ピント合わせを手動で出来ないところ。

 

総評

初心者が接写用に使うには充分な性能があります。手ブレに強いので三脚無しでの使用にも耐えます。最大1.2倍の撮影倍率に、LEDライト付き。軽いし、特に不満は無いなぁ。

雑記 万年筆に慣れることの弊害

かつてはシャープペンシルとボールペンを使っていましたが、現在はほぼほぼ万年筆しか使っていません。ちょっとした買い物のメモでも、役所に提出する書類でも、状況が許す限り万年筆で文字を書きます。(無論、シャープペンシルやボールペンでないとどうしようもない場面もありますが)

それに伴って、私の書き方も完全に変化してしまい、その影響は他の筆記具にも及んでいる様です。最近、ボールペン(ジェットストリーム)の0.36を使っていて気付いたのですが、めちゃくちゃ字が掠れるんですよね…普段私が使っているボールペンは最低でも0.7以上の太さなので問題無かったのですが、万年筆によってペンを寝かせて書く癖がついたせいで、細いボールペンを使えなくなってしまっていたのです。

また、万年筆の書き味に慣れてしまったせいで、細いボールペンなんて書き味がガリガリ過ぎて使えたもんじゃありません。周りの人は平気な顔して「やっぱジェットストリームは書き心地良いな〜」なんて言って使ってるのに…

万年筆に慣れるのも必ずしも良いことばかりではない様です。これは美味しいものばかり食べて舌が肥えてしまうのに似ていますね。やはり無知は幸福であるということなのかもしれません…

EOS Kiss M──私と祖父のカメラ

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↑雪国にて。(寒過ぎて手が赤くなってる…)

 

私が万年筆趣味に目覚めたのは、祖父が原因でした。私はおじいちゃんっ子でしたので、その他にもかなり多くの影響を祖父から受けています。

そのうちの1つがカメラで、祖父は写真を撮るのが趣味でした。私が幼い頃は、よく色んな場所に連れて行ってくれたものですが、いつも一眼レフを首から掛けて持ち歩いていました。子供の頃は、祖父に連れられ商店街のカメラ屋に行き、フィルムを現像してもらったものです。捕まえたダンゴムシを入れるのも、祖父から貰ったフィルムケースでしたね。

しかし祖父も80を過ぎ、一眼レフは重過ぎて持ち歩くのは難儀するようになってしまいました。そこで、叔父が祖父にミラーレスカメラをプレゼントしました。ミラーレスならば一眼レフよりかは軽いですから。

結局、スマホのカメラが一番軽くて便利だという結論に至った様で、祖父は殆どこのミラーレスカメラを使わずに仕舞ってありました。それでは勿体ないということで祖父から譲り受けたのが、このキヤノンの「EOS Kiss M」です。


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キヤノンのミラーレスカメラのラインナップの中では最も廉価なモデルですが、それでも10万円します。カメラとしては安い部類ですが、デジカメしか触ったことがない私からすれば、ビックリ仰天の高級品です。必要充分です。廉価なモデルということで、小さくて軽いのもライトユーザーな私に合っています。

このカメラを譲り受けてから、しぼりだとかISO値だとかシャッタースピードだとかを勉強して、素人ながらに見様見真似で写真を撮っています。このブログの写真も、半分くらいはこのカメラで撮ったものです。


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やはりちゃんとしたカメラなだけあり、スマホのカメラよりも綺麗な写真が撮れます。私の持っているスマホは、本当かどうかはさておき「脅威の1億800万画素カメラ!!」というのがセールスポイントです。実際、スマホにしてはちょっと大きめなレンズが付いています。kiss  Mは2410万画素ですので、まさかの4倍。

最高画質で撮影すると、ファイル容量は16MB。kiss Mの写真は8MBくらいなので、2倍のファイル容量の写真が撮れちゃいます。(いやぁ、知らなかった…普段は低画質設定でスマホで写真を撮っていたので…こんな化け物だったとは…)

でも実際に撮ってみると、kiss  Mの方が綺麗。やはりそこは所詮スマホスマホ。ぱっと見では変わりませんが、細部を拡大してみるとその差は一目瞭然です。kiss  Mの方が細部まで細かいんですよね。

しかし良いことばかりでもなく、写真データをPCやスマホに取り込む手間が要りますし、ミラーレスとはいえ重量があるので常に持ち歩くわけにもいきません。別の言い方をすれば、あまりにもスマホのカメラが便利過ぎるので、それと比べてしまうと利便性で劣ってしまうということです。

スマホと無線通信で直接データの遣り取りが出来ますし、昔のデジカメと比べても遥かに利便性の高いカメラなのですが、それでもスマホのカメラがあまりにも優秀過ぎるのです。特に私の様なライトユーザーの場合、要求事項中での利便性が占める割合がかなり高いので、総合的にスマホのカメラに軍配が上がってしまいます。それ故に、積極的にカメラを使おうと努力しているのが現状です。 

このカメラをもっと活用するために現在考えているのは、今は普通のレンズと望遠レンズしか持っていないので、接写用のマクロレンズを買おうということです。万年筆の様な小さなものを大きく撮るには、やはりマクロレンズが欲しくなりますね。

マクロレンズは安いものなら大体5万円くらいで買える様ですから、この際万年筆1本分と考えて買ってしまおうと思っています。そうすればこのカメラを使う機会も更に増えるはず。このブログの写真も、今よりかは綺麗になるはずです。

VAC700R バキュームフィラーな巨大万年筆──バキューム700R

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VAC700Rの立ち位置

TWSBIという会社があります。漢字だと「三文堂」。平仮名にすると、つうぃすびー。台湾のメーカーです。透明軸の吸入式万年筆を低価格で商品展開し、日本の万年筆業界に一陣の風を吹かせた話題のニューウェーブ。今回語っていくのは、そのTWSBIのVAC700Rという万年筆です。

元々TWSBIが国内で有名になったのは「TWSBIのECOっていう万年筆があるんだけど、5000円で買えるのに吸入式なの!!」「すごーい!!」って感じの経緯だったはずです。当時は安価なデモンストレーターモデルが今ほど多くはなかったので、まさにTWSBIは万年筆業界の革命児だったのです。(というか、現在安価なデモンストレーターモデルが沢山存在すること自体がTWSBIの影響なのかもしれません)海外ではどうか知りませんが、少なくとも国内ではそんな感じだったはず。

その様な経緯で認知されたが故か、何故か国内ではVAC700Rの存在感がめちゃくちゃ低いのです。実際にTWSBIの国内販売代理店である株式会社酒井さんのホームページを覗いてみたところ、PRODUCTSのところにECOとDIAMONDは載っているのに、VACは無い…えー…売ってないわけではないけど、存在感が薄い…まるでコンビニの端っこの棚に置いてある羊羹みたいです。

そんなちょっと地味な万年筆であるVAC700R。でも私、小学生の時に友達がみんなポケモンの銀(ソウルシルバー)を買ってたのに、一人だけ金(ハートゴールド)を買ったひねくれ人間です。DIAMONDとVACのどちらを買おうかちょっとだけ悩みましたが、やっぱりVACを買ったのでした。

でもでも地味だけど、だからといって悪い万年筆というわけではありません。バキュームフィラー機構を備えていて、更に巨大な、尖りまくった凄い万年筆なんです。スポーツでも、負けてる方を応援したくなるのが人間の性というもの。この記事では、VAC700Rを応援していこうと思います。

VAC700Rは税抜15000円程度で売られており、ニブはEF~Bに加え、スタブもラインナップされております。

 

見た目について

おそらくVAC700Rを初めて見た人の9割くらいが思うこと。今私が代弁します。「デカ過ぎやろ…!」です。本当に大きいです。大きいことで有名な、かのマイスターシュテュック149とタメを張る大きさです。サイズを測っていきましょう。

数字だけではいまいちピンとこないと思います。折角なので、モンブランの149と比べてみましょう。f:id:Lusankya:20230126210657j:image

149と大体同じ大きさですね。

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流石にニブの大きさでは負けてしまいますが、VACが大きな万年筆であるということは伝わったのではないでしょうか。

胴軸は無色透明です。紫色に見えるのは、私がこの万年筆にペリカンの紫インクを入れているからです。綺麗なインクを入れて眺めたいという方には最適ですね。胴軸はキャップリングの辺りで漏斗状に膨らんでいる様に見えますが、これは軸内の内側がこの様になっているだけであり、実際にユーザーが持つにあたっては持ちづらいといったことはありません。そして更に軸内に注目すると、内部に金属製の棒が入っているのが分かりますね。これがバキュームフィラーの要となる部分です。f:id:Lusankya:20230126210739j:image

クリップは、ほんの少しだけざらつきを感じます。つるつるしているけどすべすべなわけではなく、若干手に引っかかる感じ…不思議な塗装です。摩擦にはあまり強くない様で、表面が少し剥げ始めています。

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この塗装以外には特に特徴も無く、平凡なクリップです。少し固めですが、クリップとしての本来の使途には何ら問題なく使えるでしょう。
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天冠部分は銀色にメッキされており、そこにツイスビーのマークが嵌め込まれています。高級感があるというよりは、格好良いという印象です。ツイスビーのマークは赤地に「文」の字が3つ重なったもの(三文堂に由来)ですが、これは巷でも言われている様にバイオハザードっぽいですね。微生物系の研究室とかのドアに貼ってあってビックリするあのマークにそっくりです。これは中々厨二心をくすぐります。

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尾栓は真上から見ると十角形になっており、摘みやすくなっています。真っ黒なので写真だと分かりづらいですが、個人的には菊の紋章を思い浮かべる形状です。バキュームフィラーはその性質上、インク吸入時だけでなく通常筆記時にも尾栓を緩めたり締めたりすることになりますので、この部分の摘みやすさはかなり重要です。

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先程十角形と言いましたが、斜め上から見るとダイヤモンドカットになっています。尾栓は黒色ですが、実際にはうっすらと透けているので、このダイヤモンドカットが光を反射して、遠くから見ると輝いて見えます。こういった細かい部分にも拘りが感じられ好感が持てますね。


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吸入機構はバキュームフィラー。かなり大雑把に説明すると、尾栓部分を押したり引いたりすることでインクを吸入する方式です。ピストン吸入式は尻軸を回しますが、こちらはその代わりに押し引きするわけです。尾栓の動きに合わせて内部の棒も動き、こいつがシリンダー内外の圧力差を生み出すことでインクを吸入します。詳しいことは分かりませんが、軸内の圧力を下げることでその名の通りインクを「バキューム」します。

でもそれだけでなく、前述の通り尾栓を回すことにより内部の棒の固定を強めたり緩めたりも出来ます。この棒はインクタンクからぺん芯へのインクの流れをせき止める栓の役目も果たしており、尾栓を回すことでインクの供給を調整出来るのですね。この辺りはインクどめ式と同じです。言葉で説明するとこの様に小難しくなってしまいますが、実際の操作はシンプルなので直ぐに慣れると思います。

写真だと分かりづらいですが、透明のキャップには彫刻刀で彫った様なラインが縦に入っており、これも光を反射して輝きます。これもおそらくダイヤモンドカットをイメージしているのではないかと思われます。インナーキャップは無色透明。


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キャップリングはかなり太く、ふんわりと丸みを帯びています。本当にリング(指輪)として使えそうなくらいです。レーザー刻印でVAC700Rの文字。その下に小さくTAIWANとあります。その裏にはTWSBIの文字。ギンギラのリングの上に薄くレーザー刻印されていますので、遠くからだとあまり文字が目立ちません。

欲を言うならキャップリングの文字は実際に彫ってあって墨入れされているものが一番好きですが、値段を考えるとレーザー刻印が妥当でしょう。このリングの裏側の部分にネジ溝が隠れています。


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ニブはJowoの鉄ペンで、可もなく不可もなく。特に不満はありませんが、殊更満足する部分もありません。良く言えば優等生、悪く言えば面白みの無い書き味。私のVACはF字ですが、これがM以上だったりスタブだったりするとまた印象も違ったのかもしれません。


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比べてみる

本ブログの趣旨は、購入の参考になる情報を提供すること。故に、購入時にライバルとなりそうな万年筆と比較しなければなりません。独断と偏見で決めさせていただきましたが、VACのライバルはDIAMONDとカスタム823です。前者はTWSBIのフラッグシップモデルであり、VACにとっては兄弟でありながら自分を日陰に追いやった憎き相手!後者はパイロットの国産バキュームフィラー(プランジャー)!というわけで、VACをDIAMONDやカスタム823と比べていきましょう!

…と思ったのですが、生憎私はDIAMONDもカスタム823も所有しておりません。仕方がないので代役として149とパイロットのカスタムヘリテイジ92に出てきてもらいましょう。

149はサイズが似ているので。また、カスタムヘリテイジ92はバキュームフィラーではありませんが、ピストンフィラーであり価格帯的にはVACと同格。こちらもライバルを名乗るに相応しいでしょう。

この3本を並べると、やはりカスタムヘリテイジ92が少し短く感じられますね。全長は左から14.9cm、14.8cm、13.7cm。

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この画像で最も注目していただきたいのは、VAC700Rとカスタムヘリテイジ92のインク容量です。後者に比べ、前者はかなり大きなインクタンクを持つことが判ります。カタログスペックでは、インク容量はそれぞれ1.2cc、2.2cc、1.2cc。重量は40g、32g、17g。やはりVACが圧倒的。

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ニブもカスタムヘリテイジ92が一番小さいですね。VACは149に次ぐ大きなニブです。左から順に18K、ステンレス、14K。

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実際に書いてみる

では、実際に書いてみます。VAC700RのF字、インクはペリカンの4001 Violett。紙はコクヨのしっかり書けるルーズリーフ。

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前述の通り、書き心地は無難です。ニブは結構大きいサイズではありますが、カチカチでしなることはありません。筆圧をかけても殆ど字幅は変わらず、紙へのコツコツとしたタッチは鉄ペンそのもの。紙への引っ掛かりは少なく、サラサラとした印象。海外の鉄ペンFニブとしては全てに於いて標準的。目立った欠点はありませんが、目立った長所があるわけでもありません。私が「面白みの無い書き味」と表現したのは、こういった点を指してのことです。

しかしこれはあくまでFニブに於いての評価です。これより太い字幅のニブであれば、かなりの高評価となるポテンシャルを秘めていると思います。何故ならば、この万年筆は驚異的なまでのインク供給能力を持つからです。

尾栓を完全に緩めた状態だと、インクタンクが巨大なのも影響してか、ペン芯にドバドバとインクが流れ込んできます。Fニブのインク消費量では過剰なほどのインクが流れ込んできますので、油断しているとインクがボタ落ちします。(それ故に、本来バキュームフィラーは尾栓を緩めてから筆記するものなのですが、私は尾栓を緩めずに筆記することも多々あります)少なくともインク供給が追いつかなくて困ることは無いでしょう。Bニブやスタブなど、インク消費の激しいニブとの相性はバツグンです。(太めの字幅にすれば良かったなぁ…)

また、大きくて少し重めの万年筆ですので、小さい字よりも大きい字を書くのに向いています。そういった面でも、再三になりますが、やっぱり太めの字幅がオススメです。

 

総評

VACのVはバキュームフィラーのVだ!大きいからたっぷりインクが吸えるし、インクを吸うのが面白いぞ!尻軸をくるくる回す生活に飽きたあなたに最適!刺激に満ちた毎日があなたを待っています!大容量のインクタンク、高過ぎるインク供給力!買うなら太めの字幅がオススメ!

Custom Heritage 92 始まりにして完成形──カスタムヘリテイジ92


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カスタムヘリテイジ92の立ち位置

理想の万年筆を求めて何年かウロウロ徘徊してきた結果、私が至った結論は「実用性だけを求めるなら国産エントリーモデル金ペン」で充分であるということです。国産エントリーモデルとは、ここではプラチナの#3776センチュリー、パイロットのカスタム74、セーラーの(現行モデルだと)プロフィットライトを指します。

今回語っていくカスタムヘリテイジ92は、カスタム74の派生モデルであり、私の中ではエントリーモデルの中に含まれているという認識です。このブログで取りあげる万年筆の1本目にこの万年筆を選んだのも、そこら辺が理由です。

カスタムヘリテイジ92はカスタム74の弟分であるカスタムヘリテイジ91のピストンフィラーバージョンで、2023年1月現在の定価は税抜15000円。ニブは5号サイズ。価格的にもニブの大きさ的にも、エントリーモデルに位置付けられると思います。しかしエントリーモデルと侮るなかれ。カスタムヘリテイジ92は非常に素晴らしい万年筆で、原初にして至高なのです。

 

見た目について

カスタムヘリテイジ92にはカラーバリエーションが3通りあり、現在はノンカラー、透明ブラック、透明ブルーの3色です。ヘリテイジシリーズですので、全て銀トリムです。字幅バリエーションはF、FM、M。(ノンカラーのみBもあり)私が所有するのはこのうちノンカラーのF字です。

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ノンカラーと言いつつも、実際には完全な無色透明ではありません。天冠や尻軸はパイロットの言葉を借りるなら透明ブラック色ですし、インナーキャップも半透明ではあるものの、黒が入っています。これはインク汚れが目立たないようにという配慮でしょうが、好き嫌いが分かれるところだと思います。

個人的には黒インクを入れる用としてこの万年筆を使っているので気になりませんが、カラフルなインクを入れる目的で使っている人からすれば微妙でしょう。気密性には何ら影響しませんし、ここら辺は完全に見た目の好き嫌いの問題です。人によっては寧ろスモークがかっていたほうがありがたいという方もいるかもしれません。実際、私は黒インクで汚しまくるのでこの黒いインナーキャップに助けられています。

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天冠部分は内部に透明な玉のようなものが見えます。カスタムNSも天冠部分に青い丸が付いていますし、パイロットはこのデザインが好きなのかもしれません。ベスト型の万年筆は天冠部分にブランドロゴなどが付くことが多く、何も無いと寂しく見えるので、これはこれで良いと思います。パイロットには錨マークやペリカンモンブランスターの様なひと目で判る代名詞的なものがありませんので、その代わりなのかもしれません。(昔のパイロット万年筆に使われていたマークよりかは遥かにオシャレだと思います)

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胴軸はこんな感じ。インク残量は一目瞭然です。私の場合は黒インクを入れているのでアレですが、インク好きな方ならカラフルなインクを入れて色を楽しむのも良いですね。…というか大半の人はその目的で透明軸を選ぶと思います。黒インクは黒インクで、モノクロな感じで格好良いと思うのですが。ピストンが丸見えなので、吸入時に機構を眺める楽しみもあります。
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クリップの形状はカスタムヘリテイジシリーズ共通のものです。シンプルですが、格好良いですね。f:id:Lusankya:20230112194136j:image

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リングには「CUSTOM HERITAGE 92」と「PILOT JAPAN」の文字が彫ってあります。墨入れはされていません。

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ピストンはプラスチックですが、一部金属部品も使われている様に見えます。機構は一般的なピストン吸入式です。何ら支障なく、スムーズに動きます。カタログスペックでは1.2ccのインクが入るそうです。通常の使用に於いては充分なインク容量です。
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ニブは14K5号サイズニブのロジウムメッキ仕上げ。植物?の様な模様で装飾されておりオシャレです。サイズはこの価格帯の国産万年筆としては標準的。パイロットの5号サイズニブは様々な万年筆に搭載されていますが、書き味は素晴らしく、これに関して不満が上がることは基本的に無いと思います。高級万年筆にも引けを取らない良さがあります。書き味に関しては後ほど詳しく見ていきます。

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比べてみる

このブログの最大の目的は購入時の参考にしてもらうことですので、購入するに当たってライバルになりそうな万年筆と比べてみましょう。エントリーモデルの人気のある金ペンといえば、センチュリーですね。同じくエントリー価格帯の有名万年筆で、透明軸であるプラチナ#3776センチュリー忍野と比較してみます。

ある程度の万年筆オタクならパイロットの5号ニブ搭載モデルもセンチュリーもどちらも買わずにはいられない有名所ですから、どちらも持っていない初心者の方がどちらを買うか迷っている…という想定で比べてみます。

ベスト型とバランス型という違いはありますが、キャップを締めた状態だとほぼほぼ同じ長さです。カスタムヘリテイジ92の方が3mm程短いですが、これくらいなら有意な差は感じられないでしょう。

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機構はピストン吸入式のカスタムヘリテイジ92に対して、センチュリーは両用式。どちらが優れているというものではありませんが、一般的にはピストン吸入式の方が値段が高く、インク容量が多く、(万年筆オタクの感性としては)味があって乙です。価格は2023年1月現在でカスタムヘリテイジ92の税抜15000円に対し、センチュリーの通常モデルは税抜20000円。ロジウムメッキのモデルだと更にもう少し高くなります。(ちなみに忍野の場合、特殊なモデル扱いなので税込で30000円程です)

かつてセンチュリーは1万円で買えたので、調べてみると予想以上に値上がりしていて驚きました。これに関してはセンチュリーが値上がりしたというよりも、カスタムヘリテイジ92が値上がりしていないだけとも言えます。

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重さはカスタムヘリテイジ92が17g、センチュリーが21g。カスタムヘリテイジ92は胴軸径が1mm程度小さいんですよね。センチュリーは全体的にがっしりしてるし、キャップがスリップシール機構のせいかヤケに重たいのです。カスタムヘリテイジ92はピストン機構が付いてはいますが、プラスチックなのでそこまで重量に影響しないのかもしれません。

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ニブの大きさはかなり違いがあります。カスタムヘリテイジ92の方が小さいのが分かります。センチュリーのニブはパイロットの10号ニブくらいの大きさですね。どちらも14Kニブです。
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比較してみての結論としては、ピストン吸入式が売りのカスタムヘリテイジ92と、大きなニブが売りのセンチュリーという感じ。どちらもコストパフォーマンスは高いので、ピストン吸入式に魅力を感じるかどうかが争点となりそうです。書き味に関してはどちらも個性があるので、これも個人の好みの範疇でしょう。

共に大好きな万年筆なので私には甲乙付けがたいですが、値段を踏まえるとセンチュリーが値上がりしていてカスタムヘリテイジ92がまだ耐えている現状としては、カスタムヘリテイジ92が若干優勢の様に個人的には思います。(しかし万年筆は趣味のものですから、コスパなんて気にせずに好きなものを買うべきです)

 

実際に書いてみる

万年筆の書き味はインクと紙に大きく影響されるものですし、個体差もありますので最も語ることが難しい部分です。個人の主観を通してしか伝えられないものなので、人によって言っていることが違うことも多々あります。ですから、もうここから先は私個人の一意見に過ぎません。しかしそんなことを言っていてはもはやこのブログの存在意義が無くなってしまうので、私の感想を述べていきます。

私は普段、この万年筆にパイロット純正黒インクを入れ、キャップポストをし、首軸の辺りを持ってコクヨの「しっかり書けるルーズリーフ」に文字を書いておりますので、同じ環境を再現します。7mmのA罫で、B5です。
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そして実際に書いてみたのがこんな感じ。字が汚いのはお許し下さい。

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パイロットの5号ニブは比較的小さいのもあって、ニブ全体がしなることはありません。しかしその分スリットがかなり敏感に筆圧に応じて開き、筆圧を吸収してくれるので柔らかい書き心地です。字の太さも思い通りに変えられますし、トメハネハライも簡単に表現出来ます。Fだと若干カリカリしますが、一般的な紙に書く分には適度な摩擦感です。ただしざらざらした紙だと少し気になります。Mだとカリカリ感は無くなりますが、ペンポイントが大きくなるせいか少し紙へのタッチが固くなる様な気がします。好みの問題ですが、私はFの方が柔らかくて好きです。

何にせよ、パイロットの5号ニブは非常に素晴らしく、特に不満点は挙げられません。万年筆ニブの1つの完成形がパイロット5号ニブだと私は思っています。柔らかい書き心地は病みつきになりそうです。インクフローも良く、淀みなく適度なインク量が供給されます。ニブは大きければ良いというものではないということを証明してくれる存在です。

この万年筆はニブだけでなく筆記時のバランスも最適で、インクを入れた状態でキャップポストすると20g弱になります。万年筆の理想の重さは20gだと私は考えていますので、カスタムヘリテイジ92も理想的な重さだと思っています。重量が偏っているわけでもないので、バランス配分も問題なく、書きづらさを感じることもありません。

この万年筆の最大の弱点は、万年筆そのものよりもインクかもしれません。この万年筆というか、パイロットのインクに共通する問題ですね。パイロットのインクは滲みやすいので、紙を選びます。コピー用紙なんかだと滲むし裏抜けするしで使い物にならないので、紙に気を配る必要があるのが唯一の難点です。

 

総評

税抜15000円でピストン吸入式の金ペンが買える!それも信頼と安心のパイロットクオリティーで、安くて高品質!ニブの書き味も良いし、最近流行りの透明軸!こんなに優秀な万年筆が存在して良いのだろうか?!流石は世界のパイロット!!

はじめに

かえるぴょんと申します。どんどんペーパーレス化が進む中、出来るだけ紙を使おうと日々努力する、時代に逆行する大学生です。(その姿はまるで鯉の滝登りのよう!でも龍になることは一生ありません)

元々は祖父が使っていたのがきっかけで、今やどっぷりと浸かりきってしまった万年筆の世界。本格的に嵌まってからそろそろ5年くらいになります。万年筆は増殖を続け、気付けば5本になり、10本、20本…(そこから先は数えないようにしています)万年筆にかけてきたお金は…怖くて数えられませんね。

「万年筆は実用品!」と心中で唱え続け、板書はパイロットで書き、授業の出席表にはペリカンでサインし、マークシートモンブランで塗る日々です。

そんなどうしょうもない私ですが、万年筆を購入する際には専ら皆さんのブログを拝見し、それを参考にしています。色んなブログを見るにつれ自分でもブログをやってみたいという思いが強くなり、ブログ初心者ながらこうしておそるおそるブログを始めるに至りました。本当に役に立つかは分かりませんが、かつての私の様に万年筆を買おうと思っている方の目にこのブログが届き、参考になれば幸いです。
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↑ペーパーレス化に逆らうの図

 


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↑149でマークシートを塗るの図